【完】こちら王宮学園ロイヤル部
……本気で? え、本気で?
珠王先輩の成績がどれほどのものなのかは知らないけれど、ここのメンバーは選りすぐりのエリートばかりだ。……本気?
「え、いつみ先輩が教えるんですか……?」
紅茶のカップをわたしの前においてくれたルノくんが、薄らとグレーのかかるブラウンの瞳を彼に向ける。
……特殊な瞳の色。おそらく天然のそれは、とても綺麗だ。
「ああ。教えて欲しいって言うならな」
「やめとけやめとけ。
俺もいっちゃんに教えてもらったことあるけど〜、まじで意味わかんないから。スパルタにもほどがあんだろ〜が」
「男に教える趣味ねえんだよ」
すぱっとそう言って、再度「教えてやろうか?」と首をかしげる珠王先輩。
心なしかちょっと楽しそうだから、からかってるだけだ。わたしのことを、なのか、椛のことを、なのかはわからないけれど。
「お断りします」
「はは、だろうな。
……ん、1限前だし、そろそろ行くぞ」
「……? 授業ですか?」
「違ぇよ、ここの2階。
言っただろ、今日の朝に放送かけるって」
ああ、確かにそんなこと言ってたけど。
2階?と首をかしげたら、「一緒に見学しておいで」と夕帆先輩に見送られた。特に何か問題があるわけでもないからと、素直に席を立つ。
このC棟は、外観から見たところ3階建てだ。
ここは1階。階段はC棟に入る黒い扉を開けてすぐの右側と、ここへ来る廊下の途中、リビングのすこし手前の右側にある、ということは把握してる。
珠王先輩とリビングを出て、廊下の左にあらわれる階段を上る。
上に何があるのかと尋ねたら、答えはもらえなかったけれど。放送を終えたら、順番にまわって教えてくれるらしい。