【完】こちら王宮学園ロイヤル部



折り返しになっている階段をのぼって、右側。

突き当たりのそこは、位置的にリビングの上。といってもリビングの半分もないその部屋はふたつに区切られていて、よくある放送室になっていた。



区切られた片方が放送機材のある場所。

もう片方のがらんとしたスペースは、機材を繋ぐと映像を流すことのできる簡易スタジオだ。



「そっちのスタジオは、たまに取材で使うんだよ」



「……取材」



「学校のホームページに記載するインタビューに、新聞部が作る校内新聞の記事のインタビューだろ。あと、教育関係のヤツが来ることもあるけどな。

お前も来年のパンフに掲載されるから、夏ぐらいにそういうの受けることになると思うぞ」



「……珠王先輩、

入部してから言うのはずるくないですか」



来年のパンフに掲載されるとかなにそれ。

もう十分目立っていることは承知で言うけれど、目立つことは正直好きではないのだ。




「いつみ」



「……え?」



「さっき。

ほかのヤツのことは名前で呼んでただろ。だから俺のことも遠慮せずにそう呼べば良い。……なんなら、"先輩"もいらない」



「………」



この人、わたしにどれだけ女子を敵に回させたら気が済むんだろう。

仮入部の時点ですでにかなり睨まれていたのに、本格的に入部することになって。さらに名前で呼んだことがバレたら、それこそ抹消される。



「名前で呼ばねえなら返事しねえからな」



「……いつみ先輩」



< 56 / 655 >

この作品をシェア

pagetop