【完】こちら王宮学園ロイヤル部
不服ながら。返事しないとまで言われたら呼ぶしかない。
あれだけ強引に引き入れておいて無視されたら、悲しくて泣けてくる。……ここに転校してきてから、かなり流されてる気がするけど。
「ん」
満足そうに口角を上げたいつみ先輩が、わたしの髪を撫でるから。
文句を言えなくて、口を噤む。
「放送するから、そこで静かに待ってろよ」
まるでわたしが子どもみたいに、そうあやされて。
なんだか癪で、「落ち着かないからここで待ってます」と放送室の外で待つことにした。
落ち着かないのは、本当。
誰もいない静かな放送室にふたりっていう状況だけで、なんだか緊張するのに。静かにしてなきゃいけないっていうのが余計に落ち着かない。
それが嫌で待っていると言ったわたしを、特に咎めることもなく。
扉の向こうで先輩が機材を弄ると、流れたのはあの日と同じロイヤル部専用の音。そして。
「、」
台本もなにもないのに。
とても滑らかな声で留まることを知らずに、わたしが正式な部員になったことを告げる。
これを聞いた女の子たちがどんな顔をしているのか、言われなくてもたやすく想像がつく。
両親に勧められた学校に転校してきたらこんな展開が待っているなんて、とんだ誤算だ。
「おつかれさま、です」
「……なんて顔してんだよ」
1分ほどで放送を終えた彼が、機材のスイッチを落として外へ出てくる。
戸惑ったような苦笑をこぼした彼がわたしに近づき、なにを思ったのか両手で頬を包んだ。
「……後悔する気はないんじゃなかったのか?」