【完】こちら王宮学園ロイヤル部



「お風呂入ってらっしゃい」



「……はぁい」



とてもやわらかな声で促されて、特に反論することもなくそれに従う。

先輩は今日買ってきたものを開封していて、わたしはあらかじめ今日使うものだけを抜き出しておいたから、それを持ってお風呂場に向かった。



夕帆先輩と、付き合って。

デートなんかもするけれど、ほかのみんなみたいな緊張はあまり無い。



むしろ未だに、女友達みたいな。

どちらかといえば、絶対王者だったいつみ先輩の方が緊張するし。



「夕帆先輩、お先です」



ふつふつと考えながら、お風呂を出る。

髪をわしゃわしゃと拭いてから、「んー」と返事した先輩を見て、一瞬ドキッと心臓が音を立てた。




っ、さっきまでの女装姿じゃない……!

そりゃあ家にいるんだから素の姿で過ごしたいだろうけど……!



まさかお風呂から上がったら男のカッコにもどってるなんて思ってなかったし……!



「髪、乾かさねえと風邪ひくけど」



「あ、はい……ドライヤーお借りします」



「ん。俺風呂入ってくるから。

もしいつみが押し掛けてきたら、「今日は無理」っつっといて」



そんなわたしの動揺なんて知らない夕帆先輩は、そう言ってわたしの頭を撫でる。

さすが兄弟。夕陽とよく似てる。



どちらかといえば美人って言葉が当てはまる中性的な顔立ちの夕陽。

夕帆先輩はそれをすこし男っぽくした感じで、夕陽はすこし顔立ちが幼いから、もうすこし成長したら夕帆先輩みたいになるんだろうな、と容易に想像がつく。



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