【完】こちら王宮学園ロイヤル部
わかっているのに、逆らうすべもない。
歩み寄れば腕を引かれてぎゅうっと抱きしめられて、その体格差に、嫌でも彼が男であることを思い知らされる。
「……先輩」
気恥ずかしさを隠すように先輩の胸に顔をうずめていたのに、髪をやさしく引くことで強制的にわたしと視線を合わせる彼。
絡んだ視線の距離が縮まることに、何か言うよりも早く。
「っ、」
前触れなく触れたくちびるが、
しっとりとわたしのくちびるを濡らす。
一瞬にして熱を持つ頰。
とっさに目を閉じたのはいいけれど呑まれてしまうのが怖くて、先輩のシャツを頼りなく握った。
ふたりきりの部屋で。
休む間もなく与えられるキスに、惑わされる。
「……なあ。
俺、女装やめたいって言ってんだろ」
「っ、」
「……デート中に手も繋げねえし、
キスもできねえのすげえ不便なんだけど」
まぶたを持ち上げれば、わたしを見る先輩の瞳に熱が孕んでいることに気づく。
それを自然と受け入れられるほど、わたしに余裕は無い。
「っつうか、お前。
女装だと、俺のこと"彼氏"って意識してねえだろ」
「だ、って……」
だって。
ずっと女装姿の彼ばかり見てきたのに。付き合ったからって、ハイ彼氏って割り切れるほど簡単なものでもなくて。