【完】こちら王宮学園ロイヤル部
それに。
言わないだけで、もうひとつあった。
「っ、先輩、かっこいいじゃないですか。
……男の格好だと、ぜったい、」
ぜったい、嫌でも視線を集める。
女装だったら男の人の視線だけで済むけれど、女の子の視線が混ざれば、絶対に妬いてしまう。
「ひとりじめ、したいんです」
なんておこがましいことを思うくらい。
好きだから、女装姿のままでいて欲しかった。
「だめ、ですか……」
我ながらわがままだとは思ってる。
それでなくても先輩は装したくないみたいだし。
だけどどうしても、と。
言ったわがままに途端に不安になって、シャツを握ったままの手にきゅっと力を込める。
「……、わかんなくもねえけどさ」
「、」
「好きな女の前では、
俺だってある程度カッコつけたいんだよ」
女の格好だと締まらないだろ、と薄くため息を吐く夕帆先輩。
でもたとえ女装だろうと、彼はある程度紳士的だ。女同士に見せておきながらも、ご飯なんかは印象良く嫌味なく奢ってくれるし。
「それに……」
夕帆先輩の熱っぽい瞳が、ゆるく細められる。
ふっと薫り立つような彼の色気に、背筋がぞくりと震えた。