【完】こちら王宮学園ロイヤル部
その声が。
ただただ事実を告げただけのはずなのに。深い意味を持っているような気がして、すごく泣きたくなった。簡素な問いかけの、はずなのに。
「……ない、です」
「ああ」
「でも……ないから、怖い、って」
後悔する気はない。
それはつまり、自分の選んだ道を信じるということ。自分ひとりじゃなにもできないわたしにとって、それはひどく怖いことだから。
「……間違ったらどうしよう、って。
それを考えたら、言ったのがたとえ自分でも、足が竦みそうで」
言葉では言えても、実際に実現できないことなんていくらでもある。言うだけタダ、と言われるこの時代だ。
有言実行できる人なんて、とっても少ない。それでも、その弱さが浮き彫りになるたびに、怖い。
「……お前の好きなようにすれば良いんじゃないのか」
「、」
「お前の好きなようにして、お前自身が失敗することはない。
それでもし他の誰かを巻き込むことになって、お前が失敗したって思うなら。そのときは俺が、引き上げてやるよ」
「いつみ、先輩」
「引き込んだのは俺だ。
……俺が卒業するまでは、そばで守ってやる」
……出会ってから、たったの数日。
なのにこれだけで、どうしてこの人がロイヤル部の頂点にいるのか。この学園のトップに立てるのか、よくわかったような気がした。
躊躇の滲まない瞳ほど、安心するものはない。