【完】こちら王宮学園ロイヤル部
それをあっけなく見失うなんてどうかしてる。
「ふふ、それならよかった」
微笑んだルアはやっぱり優しくて、胸が痛い。
じわじわと侵食してくる痛みに訝るような顔をしていたんだろう。
「あーん」とみかんを口に押し込まれて咀嚼すれば、当然ながらフルーツの甘みが広がる。
……なんだかわたしが餌付けされてるみたいだ。
「はい、ルアも」
気恥ずかしくなってきて剥いたまま置いてあったみかんを彼の口元に持っていけば、何の抵抗もなく食べる。
笑った表情に今度は甘く胸がきしむのを感じて、口を閉ざせばシンと静まる部屋の中。
……なんか、今日は、だめだ。
「る、ルア。
やっぱりわたし、仕事残ってるから、」
「だめ。……まだそんなにたってないよ」
「っ、」
わかってる。わかってるけど。
このままここにいたら、言わなくてもいいことを言ってしまう。わたしとルアなのに。そこに恋愛感情がなかったら、苦しくないのに。
「じゃあ。
……いっしょにいたいから、もうちょっといて?」
焦がされそうになる。
甘えられたら逆らうこともできない。
上げかけた腰をゆるゆるとおろせば純粋な笑みで笑ってくれるルアに、どんな顔をしたらいいのかわからなくなった。