【完】こちら王宮学園ロイヤル部
だって。わたしとルア、なのに。
恋愛感情がつながったことすら奇跡みたいなのに。
ねえ、「触れたい」なんて。
どんな顔して言えばいいの。どうやったら、言葉以上の方法で彼にうまく伝えられるの。
湧き上がったその衝動を、
まだ自分ですら呑み込めてないのに。
「ほかにも色々あるけど、なんか食べる?」
和菓子とかお煎餅とか、あったかい緑茶もあるよって。
それ完全にこたつ用に入って食べる用ね、ってわたしを笑かそうとして言ってくれてるのか。
それとも彼にとっては普通なのか。
そんなことすら把握できなくて。
伸ばした指先が、申し訳なさそうに彼の服をつかむ。
今日もまっさらな彼のシャツ。あまりにも白くて綺麗だから、毎回新品を着てるんじゃないかって、そんなふざけたことを考えて。
「どうしたの?」
「……っ」
向けられる感情のうちで、恋情だけがしとしとと積もる。
酸素のない場所に閉じ込められたみたいに、息苦しくなった。
「南々瀬?」
ああ、ずるい。
……ぜったい、わかってるんでしょう?
「どうしたの、南々瀬」
わかってるから、そうやってわたしを呼ぶ。
ルノの婚約者の話を教えてくれた時もそう。彼はふわふわしているくせに、たまにこうやってはっきり話す。見抜いたみたいに。