【完】こちら王宮学園ロイヤル部
中学の頃からみさとはわたしに対してこうだから、苦笑まじりに「もうお前ら付き合えば?」と何度かあきれた目をまわりから向けられたこともあるけど。
みさとが少々スキンシップ過剰なだけだ。……それに。
「大和、みさとのこと引き剥がして……」
「!? やだそれなら自分で離れる……!!」」
ばっと、勢い良くわたしから離れるみさと。
大和はそれを見て訝しげに眉間を寄せていたけれど、みさとにとっては深刻な話。みさとは中学の頃からずっと、大和のことが好きだ。
しかも随分とピュアなせいで、軽く指先が触れただけでも赤くなってしまう。
それなのに気づかない大和の鈍感ぶりは、まさに天下一品。
「ほんとかわいいんだから」って揶揄えば、みさとは赤い顔でわたしを睨んだ。
……その表情ですら、どうしようもなくかわいいんだけど。
本当、わたしがもし男として生まれていたら、とっくにみさとと付き合っていると思う。
好かれているのに気づいていない大和がもったいなくて仕方ない。
みさとが加わったことで、さらにざわざわと騒がしい教室の中。
──突如、スピーカーから音が流れ出す。
その瞬間窓側に固まっていた女子から、はしゃぐような悲鳴が上がった。
……うん? 一体、何事?
『おはようございます。
こちら王宮学園ロイヤル部です』
状況を掴みきれていないわたしの耳に届く、聞き取りやすい綺麗な声。
芸能科にはアナウンサーを目指している人なんかもいるらしいから、そういう関係かもしれない。
というより。
……ロイヤル部って、なに?
『お呼び出しを申し上げます。
普通科2年1組、姫川南々瀬さん』
女の子たちの視線が、途端にわたしを向く。
こっちを見てるっていうより、なんか、睨まれて……?