【完】こちら王宮学園ロイヤル部
甘さを宿らせた瞳が、向けられる。
「南々ちゃんとふたりきりになれてラッキー、ぐらいには。
やましい事考えてこの場にいるけど~」
「……変態」
「ふは、言うと思った。
……でもまあ今日は、晩飯いっしょに作って食べようって話が前提のお泊まりだしな。そんな端から潰すようなことしねえけどさ」
そう、今日はお泊まりだけど。
その根底にあるのは、いっしょに夕食を作ろうという約束だ。
この間、何気なく「南々ちゃんの手料理食べたいな」と言った椛。
でも教師どころか料理人すら目指せてしまうような料理の腕を持つ彼の手料理が好きなわたしは、彼のご飯がいいと返した。
はじまりは、仕事で遅くなる親に変わって、弟妹たちにおやつになるものを作ってあげる、というところからはじまったらしいけど。
美味しいご飯を作ってくれる彼に、わたしの自己満足な料理を食べてもらうのも、と渋っていれば。
「ならいっしょに作っていっしょに食お?」と。
椛のその提案と同時に交わした約束を、今回果たす予定だ。
ちなみにメニューは事前に決めて、買い出しは既に椛が済ませてくれている。
チーズ好きなわたしのために、チーズをたっぷり使ったチキンの香草焼き、エビのピラフ、オニオンスープ、ツナとコーンのサラダ。
一応言うなら、メニューを考えたのは椛だ。
……わたしよりも女子力が高い。
いっしょにご飯作ろうって話をしただけなのに、まさかこんなメニューを選んでくるとは思わなかった。
いいけど。絶対美味しいだろうからいいけど。
スープやサラダが色々出てくるのはわかる。
香草焼きもメインとしてチーズを使ったもので色々考えてくれたんだろうからまだわかる。
謎なのは、ピラフだ。
え、あれって普通に友だちと「ピラフ作ろう」ってなるものだっけ?
いや、ともだちじゃなくて彼女ですけどね。
彼女と「ピラフ作ろう」ってなる?どっちかがピラフ好きを公言してるわけでもないのに?