【完】こちら王宮学園ロイヤル部
そわそわして、不格好に甘さを消す。
普段制服のまま料理するときはエプロンをつけて、私服の時はエプロンをつけない派。
でも今日は一応彼の前で、なおかつふわっとしたおしゃれ用のニットだからエプロン持参。
椛には気づかれてないと良いけど、正直に言おう。
泊まる約束をかわしたときからもうめちゃくちゃ考えてます。いろんなこと。
ありとあらゆるパターンを想像して、なんなら服も新品だ。
しかも張り切ってるのを気づかれるのが嫌で、あえて着る前に一度洗濯する徹底ぶり。
このあたりは知られると恥ずかしいから、ちょっと気づかないでほしいけど。
些細なことも本当に気になってしまう。
会いに来る前にメイクは気にしているし、アクセサリーだって気に入ってもらえそうなものを悩んでる。
ばかみたいだけど、そんなばかみたいなことに時間も気持ちをかけられる"恋愛中のおんなのこ"。
わたしは案外、嫌いじゃない。
こんなにも椛だけに夢中だって。
言ったら恥ずかしいから、絶対言わないけど。
「……エプロンしてご飯作ってるお嫁さんが待ってる家に帰んの、俺結構まじめに将来の夢なんだけど。
なんか、南々ちゃん見てたら、余計そういう気になる」
「………」
「エプロンしてるお嫁さんっていいな」
どういう反応すればいいの、これ。
エプロンつけただけでここまで言われるのは想定外すぎて、フリーズする。
「あ、の……」
「ん?」
「……その将来の夢。
叶える相手、わたしじゃ、だめなの?」