【完】こちら王宮学園ロイヤル部
さらっと。
何かとんでもないようなことを言われたような気もするけれど、ふたりでリビングへと引き返す。そうだ、と彼が小さく呟いた。
「昨日のあれ、結局彼氏じゃないのか?」
「大和のことですか? 違いますよ。
同じ中学の出身なので、仲は良いですけど。それよりどうして昨日の事知ってるんですか」
尾行していたわけじゃあるまいし。
どうしてわたしが大和と帰ったことを知っているのかと、素朴な疑問を投げてみれば。
「防犯カメラついてるの知ってんだろ」
「え、いちいち確認してるんですか?」
「ルアの部屋に、モニターがあるんだよ。
部屋から出てこねえけど、その代わりにパソコンを通してできる作業と、防犯カメラの管理はあいつの仕事だからな」
……なるほど。
だからはじめてここに呼ばれた時も、うろうろとしていたわたしの姿がすぐに見つかったのか。リアルタイムでモニター監視しているらしい。
リビングにモニターがある雰囲気でもなかったし、ちょっとした疑問が解決した。
それにしても、どんな伝わり方をすれば"彼氏"と勘違いされるんだろう。
「あんまりほかの男と仲良くするなよ?
一方的に、俺が妬くだろ」
かあ、っと。
蠱惑的な表情で言われたそれに、理解するよりも早く顔が熱を上げた。それを見て楽しげに笑った彼を見て、揶揄われただけかと拗ねるように顔を逸せば。
「まあ俺のこと妬かせてえなら、話は別だけどな」
「っ、」
こんな風に、動揺させてくるくせに。
リビングの扉を開いて、優雅にエスコートしてくれるいつみ先輩。それがあまりにも自然で。この人タチが悪いなと、本人には言えないことをひっそり思った。