【完】こちら王宮学園ロイヤル部



ここにきてたまらなく恥ずかしくなってきて、夕陽の10秒カウトダウンを目の前に、頭の中が真っ白になる。

だが残念なことにこの男は「10秒」と言ったら本当に10秒しか待ってくれない。



10秒で心の準備ができるなら、

わたしは数年も夕陽を放置してないだろうけど。



「っ、ああもうわかった……!

わかったから……痛く、しないで、」



カウントダウン終了間際。

もうヤケだとそう言い切れば、頰を撫でていた彼の手が、ぴたりと止まる。そして。



「……それって、痛いほうがいいっていうフリ?」



ばかなんじゃないの。この男ばかなんじゃないの。

何度でも言ってやる。ばかなの?



「そんなわけ……、って、夕陽」




そんなわけないと言い返そうとして、ぴたりと言葉を止める。

見上げた夕陽の表情は真っ赤になっていて。名前によく似合うその姿に、目を瞬かせた。



「ナナに「いいよ」と同じ返事もらって……

平然としてられるわけないでしょ」



「………」



「このクソ鈍感。

……優しくしてあげるからもう目瞑ってて」



また目瞑って欲しいの?なんて言ったら、今度こそ怒られるんだろう。

っていうかわたしも夕陽に影響されて大概口悪いな、と。目を閉じて考えていれば、くちびるには言葉と裏腹の優しいキスが触れる。



「……すきだよ」



【その6 女王夕陽の場合】



素肌の上で、触れ合ったおそろいのネックレストップ。

願わくば、左手薬指にも、愛を誓えますように。



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