【完】こちら王宮学園ロイヤル部
【おまけ】
「ただいま。
夕陽、彼女さんちゃんと送ってあげた?」
がちゃりと開く扉。
21時過ぎを指している時計に、思ってたよりも早かったなと頭の片隅で思う。
「おかえり。 ……んーん。
まだ部屋にいる。っていうか寝てる」
「……門限平気?」
正直な話をするとそういうつもりじゃなかったんだけど、ちゃんと香水つけてくれてるナナに色々止まらなくなって。
無理させちゃったからデリバリーで夕飯は済ませたけど、やっぱり疲れたのか、今は部屋で寝てる。
「ん、平気……、って」
そこでようやく。
母さんの後ろにもうひとつ人影があったことに気づいて、ぱたりと口をつぐんだ。……母さん、余計なもの拾ってこなくていいのに。
「"寝てる"、ね……
俺ちょっと南々ちゃんに伝言あるから顔出すわ。夕陽勝手に部屋入、」
「顔出さなくていい。っていうか出すな」
「兄貴に向かってなんて口きいてんだよクソガキ」
「ハッ、いくみに嫌われろばーか」
べっと舌を出して、すぐさま部屋に撤退。
逃げ込めばドアの向こうから何やら文句を言う声が聞こえてきたけど、変態兄貴は絶対部屋に入れない。入れてたまるか。
「……ナナは俺のだし」
ぼそっとつぶやけば背後から聞こえた笑い声。振り返れば身を起こしたナナが「夕帆先輩来てるんでしょ?」と兄貴の名前を出したから。
歳を重ねるごとに魅力を増すナナにムカついて。理不尽に、そのくちびるに噛みついた。