【完】こちら王宮学園ロイヤル部
カシャッとシャワーのノズルがかけられた音がする。
案の定すぐにお風呂場の扉が開く音がして、「ほかになにか話しておかなきゃいけないことあった?」と、わざとらしく話を逸らした。
『いや、特に。
いっちゃん上がってきたんだろ~?』
「ええ、」
『ならもう切るわ~。
俺も、チビたち寝かしつける時間だし』
椛は敏感に気づいてくれる。
そんな優しい彼と「おやすみ」「また明日」のふたつを言い合って電話を終えたタイミングで、脱衣場とリビングをつなぐ扉がパタンと開いた。
……またこの人は。
「風邪ひくから、ちゃんと上着きてよ」
もう慣れてきちゃったけど。
自由に上半身裸で歩くのはやめて欲しい。心臓に悪い。お風呂上がりはいつもこんな感じで、それこそ言っても直してくれないし。
「わたしが修学旅行のあいだに風邪ひいたら、誰が面倒見るの?
いくら同じマンションだからって、あんまり夕帆先輩に迷惑かけないでね」
「むしろ迷惑かけてきてんのはアイツの方だろ」
「あれはただいつみ先輩に構ってほしいだけでしょう?
もう……ほら、ちゃんと服着て?」
ソファの隣に腰を下ろした先輩の首にかかっていたタオルを抜き取って。
代わりに彼が持っていたシャツを着てもらう。
ぽたぽたと雫の伝う髪をわしゃわしゃと拭いてあげていたら、不意にタオルの隙間からふっとゆるめられた瞳と目が合った。
漆黒の瞳に囚われて、どきりとした時にはもう。
「ん、」