【完】こちら王宮学園ロイヤル部
こんな不安定な状況でいつみ先輩を置いて修学旅行に行くなんて、なんとなく不安だ。
彼はしっかりしているし、なにか生活能力が低いわけでもない。食事と睡眠が不安ではあるけど、数日ならなんとかなると思う。
なのにこの不安が、消えてくれない。
わたしって、必要?と。
頭の中でふつっと湧き上がった質問があまりにも情けなくて、泣いてしまいそうになった。
必要だから、彼はわたしの薬指に14年分の愛を誓ってくれた。
それを疑ったことは、ないのに。
「髪乾かして、歯磨きしたら寝れるから……」
「ん。お前が風呂入ってる間に俺はもう済ませたから、終わったら声掛けてくれればいい」
「……はぁい」
お互い時間の組み方に一切無駄がない。
カチカチとパズルのようにぴったりと時間を埋めていく。空き時間、というものが嫌いなタイプだ。
「……いつみ先輩」
「ん?」
「……いや、なんでもないです」
彼に気づかれないように、気を遣ってあげたい。
前に安眠効果のあるハーブティーなんかをルノに教えてもらおうかと思ったけれど、相手はあの珠王の医療関係者だ。
普段コーヒーを飲む彼に紅茶を出せばそれだけで何かしら勘づかれるだろうし、気を遣っていることに気づけば、彼はまた本心を隠してしまう。
それが嫌で。……無理しないでって、ただ言いたいだけなのに。
どうしたら。
……もっと、頼ってくれるんだろう。