【完】こちら王宮学園ロイヤル部



かっこいいと思う。で、歌は好き。

こういう答え方ってことは、特に興味なし。



「まあ、中3のくせに『女との関係にだらしない』って噂もあるみたいだからねえ」



「……そうなの?」



「ん〜。ほらここ、芸能科あるじゃん?

だからそういう噂も、ちょいちょい流れてきたりすんのよ〜」



何が『ファンに人気のNANAスマイル』だよ、とテレビ画面に目一杯うつるNANAが所属しているアイドルグループのコンサート映像を見て思う。

女の子って裏の性格とか疑わねえもんなんだろうか。



……それとも、知ってても顔が良いから許容、か。

盲目って言うのは恋だけど、好きなものに対してはなんでもそうだと思う。



実際演技がうまいのも歌がうまいのも事実だから、そういう部分で許容されてんのかもだけど。

やっぱ顔なんだろうなと、失礼なことを考える。




「あ、ちょっと姉さん」



ぼんやりしてたら、手にあったリモコンを奪われた。

それからぷつっと電源ボタンが押されて、NANAスマイルのうつっていた液晶は一瞬にして真っ暗。何の音も、発さなくなった。



「夕帆先輩、アイドル嫌いなんですか?」



「別にそういうわけじゃないのよ。

ほら、もうとっくに莉央は食べ終わってるじゃない。さっさと行ってきなさい、買い出し」



「……はいはい。んじゃあ行くぞ〜」



こういう時夕さんには逆らわない方が良い。

それを知っているから早々に話を切り上げ、ふたりに声をかける。



当たり前だけど、このC棟は騒がしいリビング以外いつも静かだ。

外の音が遮断された、たった6人だけの城。そこに加わったお姫様。C棟のCは、城を意味する「castle」の頭文字を取ったもの。



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