【完】こちら王宮学園ロイヤル部
不機嫌さをまるで隠さずに、俺を睨む莉央。
でも遅い。俺ははじめからこのつもりで莉央を買い出しに付き合わせたし、もちろんそれは姫に対しても同じ。
「『ジュリエット』……?」
「ん、シフォンケーキ食ったろ?
あのシフォンケーキ売ってるケーキ屋だよ〜。昨日の放課後にねえ、姫が部員になったお祝いでいっちゃんがケーキの予約してくれてんだわ」
「え、」
「ホールのケーキ予約してあるから、それ受け取りに行っておいで。
ちょいと分かりにくい場所なんだよねえ。莉央が知ってるから、案内してもらってな〜」
「……お前はじめから、」
「んじゃまたあとでね〜、おふたりさん」
莉央の声は聞こえていたけどあえて無視。
ひらひらと手を振って王学へ帰る道を進み、途中で振り返れば反対方向の『ジュリエット』へ歩いていくふたりが見えた。
……ああ見えて真面目だからな、莉央は。
どれだけ文句を言っても最終的には動くし、刷り込みのように"いっちゃんが予約した"とまで言っておけば行かないわけにはいかない。
そこまで計算して言ったけど、上手くいったみたいだし。
「……ちょっとは親睦深めてくれればいいんだけどねえ」
なんだあの微妙な距離感。
付き合いたてのカップルかよ。
お互いがお互いに掴めなくて、探ってる最中ってところか。
まあ仲良くなってくれんならなんでもいいけど。
角を曲がってふたりが見えなくなってから、俺も足を進めて学校へともどる。
いい意味で、化学反応。起こる確率は……うん、低そう、だけどな。