【完】こちら王宮学園ロイヤル部
財布越しでも読み取れることにこの間気づいたから、いつものようにセキュリティシステムにそれを翳すけれど。
……なぜか、いつものピッという電子音が鳴らない。
「何してんだよ」
「いつもならこれでちゃんと開くのよ」
そう言って長財布を開けている間に、莉央が自分のカードで開けてくれる。
お礼を言って、何気なく財布の中に視線を落としたわたしは。
「っ、ちょっと待って、」
「あ?」
「カード……入って、ない」
学生証に保険証、あとはキャッシュカードなんかを入れている、お札の後ろのカードポケット。
いつもそこに入っているはずの、C棟のカードだけが、なぜか綺麗になくなっていた。
「え、なんで……?」
扉を開いて待ってくれている莉央の前で、慌てて財布の中を探る。
ポケットに入っているわけだし、当然財布の中に落ちる可能性は少なくて。あわててバッグの中も探してみたけれど、どこにもない。
「どこで出したんだよ」
「いや、だから普段出さずに使ってるんだってば。
……もらった日から数日は入るときに使ってたけど、財布越しでも読み取れるのを知ってからは一回も出してないの」
どこで落としたんだろうと、顔面蒼白になる。
あのカードは大事だって、あれほどいつみ先輩に言われてたのに……!
「……とりあえず、中入れって。
なくしたことに変わりはねーんだから、先に報告するしかねーだろ」