【完】こちら王宮学園ロイヤル部
「あり、ました。
みさとが後ろから話しかけられて……わたしはそのタイミングでスマホ見てたので、もしかすると、」
「そのタイミングでしょうね。
後ろから話しかけたってことは、数人でやったんじゃないかしら」
「………」
見事に掏られたっていうわけか。
……どうりで、財布が違うところに入っていたわけだ。取るだけ取って、適当なところにもどしたんだろう。
「当たり、か。
教養の2年だ。3組ってところまではわかったが、今授業中で動いてねえからどの生徒かまでは把握できねえな」
え、そこまで特定できたの?早くない?と、彼のパソコンをちらっと覗いてみれば。
どうやら全員のカードの位置情報がわかるようになっているらしく。確かに、彼が言った教室でチカチカと表示が光っていた。
あのカード、中にGPS機能が埋め込みしてあるらしい。
……何から何まで、ハイテクな学校だ。
「んじゃ、放課後に特定して、カード取り返してこればいいの〜?
それ教養の女の子だろ〜?俺行こうか?」
「いや。ただ取り返すだけだと、再発する可能性があるからな。
あえて数日泳がせて、最終的に取り締まることにする」
「でも、それだとあのカードと同レベルのセキュリティじゃなきゃ通れないあたしたちは出入りできないわよ。
理事長といつみのカードだけは、引き上げたセキュリティでも通れるけど」
「椛が買い出しに行く時は、俺のカードを渡す。
南々瀬がここに来る時は、俺が迎えに行ってやる。それで通れるだろ」
「……まあ、できないことはないわね。
お互いに、かなり不便だろうけど」
「……あの、」
いつみ先輩と夕帆先輩の間で、さくさくと内容が決まっていくけれど。
みんなにそんな不便をかけるわけにはいかない。セキュリティレベルを引き上げてもらっている時点で不便をかけてるから、今更かもしれないけど。