【完】こちら王宮学園ロイヤル部



……まあ暑くはなるだろ。夏だし。

つーか7月入ったら、夏休み前にテストあるからめんどくせーよな。役員の成績が落ちてねーか確認するために、テストは免除されてねーし。



「お前、夏休みもここにいんの?」



「はい、ルアもおそらく部屋から出ないと思いますし。

椛先輩が実家に帰るはずなので、食事だけは、なんとかしなきゃいけないですけど」



「あー、あいつは兄弟いるから仕方ねーな」



「莉央さんはどうするんですか?」



「……なんも考えてねーよ」



本当に、何も。

拘ることもなく、ただ、その場を生きていられたらそれでいいんじゃねーかなって。──何もかも、俺が捨てたはずの、もんだから。




「夏休み、何か遊びません?

南々先輩も誘って、一緒に」



お祝い楽しかったじゃないですか、と。

俺があいつと『Juliet』に行った日のことを口にするルノ。まあ、お祝い自体は、普通に良かったと思うけどな。あれはねーだろ、あれは。



何がって、ケーキの話だ。

下は普通のショートケーキで、生クリームでコーティングされたその上。フルーツと、砂糖で出来たバラが散りばめられたもの。



中央のチョコプレートには「Welcome南々瀬」の文字。

そこまではよかった。ただ問題は、それを箱から出した時の、俺らの純粋な感想だ。



「……いっちゃん、なんでこんなウエディング感のあるケーキなんだよ〜。

ほかにも色々種類あったでしょうに」



ウエディングケーキだったら、もっと豪華なんだろうけどな。

なんつーか、ウエディングケーキを小さくホールにしたあの感じ。俺と椛とルノが苦笑する中で、オネエと南々瀬だけは「綺麗」っつってたけど。



女にしかわかんねー感性なのか……いや、あのオネエは女じゃねーけど。

まあ南々瀬が喜んでるからいいか、という結論になったあれ。ある意味強烈だった。



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