【完】こちら王宮学園ロイヤル部



心配してたくせに、そういうとこちゃっかりしてんだよな。

中学時代から振り回されてきたルノにとっては、特に何も問題はねーんだろうけど。後輩をこき使ってやるなよ。



「どうぞ」



数分後。

言われた通りタオルを温めてからもどってきたルノに、お礼を言って受け取る椛。そのまま恒例のように顔に乗せるのかと、思いきや。



「、」



タオルを持ったままの手でおもむろにルノの腕を掴んで、反対の手で額に触れる。

いきなりの行動に「なんですか」とルノが顔をしかめた。……まじで何やってんだこいつ。



「熱はねえけど、体調は?」



全員の「何してるんだ」という視線を浴びながらも、椛は真剣な声で聞く。

冗談には、見えないそれ。至極真面目に聞いてるらしい。




「……季節の変わり目なので、すこし風邪気味です。

でも日常に差し支えるほどじゃありませんから」



「……熱上がったらちゃんと言えよ」



「言われなくても、

いつもお世話になってるじゃないですか」



椛には椛の事情がある。ルノにはルノの。

その双子の弟のルアにも当然同じ事情があって、どれも同じってわけじゃねーけど。椛と八王子兄弟の悩みは、どう頑張ったって交わりはしない。



だけどルノが一番に頼る先輩は椛で、椛がいつも気にかけている相手はルノで。

そうじゃねえとお互いに崩れていくのを知っているから、俺らはそこに何の口出しもしない。



たかが中学時代からの先輩後輩。

だけどこいつらにとっては、何よりも深いつながり。



「……ルアの方も、心配だな。

お前もルアも、同じタイミングで体調崩すから」



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