【完】こちら王宮学園ロイヤル部
「冗談に決まってんだろ。間に受けんなよ」
「受けてねーわ……!!
俺はたとえ自分が女として生まれてたとしてもお前だけは嫌だからな……!!」
「お前が本当に女でも、俺もねえと思うぞ」
「本当に、って強調すんなよやかましい!」
普段は椛がいるから、夕と騒いでんのはあいつだけど。
ほかのヤツがいなくなると、ここふたりの子どもっぽさも相当目立つ。ただ単に、いつみが夕を揶揄って暇つぶしやら息抜きに使ってんのが悪いんだろーけどよ。
「夕帆、ちょっと騒ぎ過ぎじゃない?
廊下まで声聞こえてたけど、どうしたの」
カチャッと、リビングの扉が開く。
そこから顔を出した相手に、夕はあからさまに頰を引きつらせた。あ、違う、いつみもか。
「……なんで来たんだよ」
「あら? そんな口聞いてもいいのかしら。
……大事な話があってここに来たんだけど」
「………」
いつもの、いつみ大好きモードを発動しない理事長秘書こと、いくみさん。
ということはつまり、かなり真剣な話があるということで。
「……何があった」
いつみの声も、真剣みを帯びる。
散々騒いだ夕も、落ち着いてその碧眼をいくみさんに向けた。そして、俺らの視線を一身に浴びた彼女は。
「来てないのよ」と。
たった一言だけ、俺らに告げる。