一輪の花を君に。2nd
#1
ーside美空ー

施設から、無事に卒業できた私は今大好きな仲間と一緒に、穏やかで温かい日を送れている。




もちろん、中森先生も一緒に。




私の生活のテリトリーに、中森先生も私にとって、欠かせない存在になっていた。






あの日、退院の日に中森先生がくれたネックレスを首にさげて、私はまだ新しい制服に身を包み込む。






「おはよう!」





「香音、おはよう。」







「美空、もう中森先生来てるから一緒に下に降りよう。」








「うん。ありがとう。」







施設を卒業してから、中森先生は毎朝7時に欠かさず私の様子を見に来る。





この時間が、何よりも1番好きな時間。





何よりも、安心できて温かくてたまらなく大好きな時間。







「今日も、元気そうだな。」






私は、下に降りてから中森先生の元へ走った。








「最近は調子いいの。」







「でも、油断は禁物だからな。



今日は、診察の日だから忘れずに病院に来るんだよ。




あと、喘息の記録を忘れずに持ってきて。」








「…忘れてた…。」







「えっ?」







「何でもない。」







「美空?

お前まさか、記録つけてない?」







「…。」






私は、何も言わずずっと俯いていると中森先生は、私の顎を救って視線を合わせた。







「俯くなよ。


記録を、忘れたなら次から付ければいいから。


だから、今日も忘れずに診察に来いよ。





俺、今日は4時に抜けられそうだからそのまま美空の学校に迎えに行くから。」







「それは、悪いからいいよ…。


病院くらい、近いから1人で行ける。」








「美空…?


俺が迎えに行ける日は、迎えに行かせて。



美空の、支えになりたいんだ。



できる限り、俺は美空の側にいたい。」







中森先生は、そう言ってから自分の額を私の額にあて、吐息がくすぐったいぐらいぶつかる近さで、私は思わず目をそらしてしまった。





「中森先生、離れて下さい…。」







私は、この近さに耐えきれず中森先生の胸を軽く少しだけ押した。







「少し、熱があるからあんまり無理はするなよ。



香音ちゃん、学校で美空に何かあったらすぐに教えて。」







「はい。もちろんです。」







「あ、中森先生。


今日は美空、夜の8時から11時までバイト入ってるんですけど、そっちの方は行っても大丈夫なんですか?」






大翔が、奥の方からエプロンを取りながら出てきた。








「それは、今日の診察しだいだな。


結果次第では、行かせることはできないかな。」





「…分かりました。」






「ごめんな、美空。」






「何で、先生が謝るんですか?


私は、大丈夫です。」







「そっか…。


それじゃあ、また4時にな。



皆、くれぐれも美空のことを頼むな。」







「はい。」




中森先生は、笑顔でそう言ってから私の髪を撫で、家を後にした。
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