一輪の花を君に。2nd
ーside花森ー
それは、今から15年前のこと。
厳しい暑さの季節だった。
私は、ある家族に出会った。
それは、看護師になってからまだ1年目の私が始めて担当した患者さんの1人だった。
榎本花陽(えのもとはるひ)
まだ、5歳で白血病を患い移植を待っていた。
でも、花陽ちゃんの血液型はAB型のRH-で、日本人には珍しい型だった。
最終手段として、精子バンクから血液型がAB型のRH-の遺伝子をもつ精子を母親の卵子を摘出し、その精子を受精させ母親の体内に入れる、所謂体外受精から妊娠させた。
それが、美空ちゃんだった。
でも、それは失敗して美空ちゃんは血液型AB型のRH+だった。
元々、成功する確率は限りなく低いことや、命は平等にあること、もし成功しなくても責任は両親にあり、決して美空ちゃんの親権を守ること。
そのことを約束し、書類にもサインした。
それなのに、美空ちゃんの検査結果が出た時、美空ちゃんを睨みつけて、「この役立たず」と、言い赤ちゃんだった美空ちゃんの顔を思いっきり叩いたそうだ。
その1ヶ月後、花陽ちゃんは亡くなった。
花陽ちゃんの亡くなったあとのことは、分からないがその日から美空ちゃんへの暴力が始まったんだと思う。
詳しいことは分からないけど…。
そして、理人くんが言っていた兄に当たる人は、美空ちゃんや花陽ちゃんの兄に当たる、廉斗君だと思う。
廉斗君は、美空ちゃんと12歳離れたお兄さんで 、最後に美空ちゃんを抱っこして連れて帰った。
母親と父親は、美空ちゃんを見向きもせず帰っていった。
私達は、児童相談所に相談することと施設に預けることを提案したものの、それは拒否され、お兄さんが美空ちゃんを抱っこして連れて帰った。
でも、どうして今更…。
そもそも、あの後あの家族はどのような形になったんだろうか。
ここは、美空ちゃんが通っていた病院じゃないから、詳しいことは分からないけど。
1つだけ言えることは、母親と父親は花陽ちゃんが亡くなった哀しみを美空ちゃんのせいにして感情をぶつけ、あたっていたんだろう…。
そう考えると、悔しかった。
もっと、私達があの場面で強く言っていたら美空ちゃんは、もっと違う人生を歩めていたのかもしれない。
美空ちゃんが、この病院に通うようになってから、施設にいたことや父親に暴力を振られていたことを知って、もっと激しい後悔が私を襲った。
美空ちゃんの心に深い傷をつけてしまった。
他人だからって、後一歩踏み込めなかった自分に、情けなさややるせない思いがあった。
だから、ナースステーションの隣にある談話室で話す声を聞いて、私は辛い気持ちになった。
何も、分からないくせに。
今更、あなた達に美空ちゃんを救えるの?
そんな思いになってしまったんだ。
それは、今から15年前のこと。
厳しい暑さの季節だった。
私は、ある家族に出会った。
それは、看護師になってからまだ1年目の私が始めて担当した患者さんの1人だった。
榎本花陽(えのもとはるひ)
まだ、5歳で白血病を患い移植を待っていた。
でも、花陽ちゃんの血液型はAB型のRH-で、日本人には珍しい型だった。
最終手段として、精子バンクから血液型がAB型のRH-の遺伝子をもつ精子を母親の卵子を摘出し、その精子を受精させ母親の体内に入れる、所謂体外受精から妊娠させた。
それが、美空ちゃんだった。
でも、それは失敗して美空ちゃんは血液型AB型のRH+だった。
元々、成功する確率は限りなく低いことや、命は平等にあること、もし成功しなくても責任は両親にあり、決して美空ちゃんの親権を守ること。
そのことを約束し、書類にもサインした。
それなのに、美空ちゃんの検査結果が出た時、美空ちゃんを睨みつけて、「この役立たず」と、言い赤ちゃんだった美空ちゃんの顔を思いっきり叩いたそうだ。
その1ヶ月後、花陽ちゃんは亡くなった。
花陽ちゃんの亡くなったあとのことは、分からないがその日から美空ちゃんへの暴力が始まったんだと思う。
詳しいことは分からないけど…。
そして、理人くんが言っていた兄に当たる人は、美空ちゃんや花陽ちゃんの兄に当たる、廉斗君だと思う。
廉斗君は、美空ちゃんと12歳離れたお兄さんで 、最後に美空ちゃんを抱っこして連れて帰った。
母親と父親は、美空ちゃんを見向きもせず帰っていった。
私達は、児童相談所に相談することと施設に預けることを提案したものの、それは拒否され、お兄さんが美空ちゃんを抱っこして連れて帰った。
でも、どうして今更…。
そもそも、あの後あの家族はどのような形になったんだろうか。
ここは、美空ちゃんが通っていた病院じゃないから、詳しいことは分からないけど。
1つだけ言えることは、母親と父親は花陽ちゃんが亡くなった哀しみを美空ちゃんのせいにして感情をぶつけ、あたっていたんだろう…。
そう考えると、悔しかった。
もっと、私達があの場面で強く言っていたら美空ちゃんは、もっと違う人生を歩めていたのかもしれない。
美空ちゃんが、この病院に通うようになってから、施設にいたことや父親に暴力を振られていたことを知って、もっと激しい後悔が私を襲った。
美空ちゃんの心に深い傷をつけてしまった。
他人だからって、後一歩踏み込めなかった自分に、情けなさややるせない思いがあった。
だから、ナースステーションの隣にある談話室で話す声を聞いて、私は辛い気持ちになった。
何も、分からないくせに。
今更、あなた達に美空ちゃんを救えるの?
そんな思いになってしまったんだ。