一輪の花を君に。2nd
ーside中森ー



花森先生と分かれてから、ずっとある言葉が心に引っかかっていた。





『命は平等にある。』



この一言が、ただ体外受精されたことだけが絡んでいるようには思えなかった。




もっと、自分の知らないことも一緒に絡んでいるように思えた。




美空に関係あることっていうのは確実なんだろうけど…。





そもそも、何で美空は精子バンクから受精されたのか。





いや…




その事も大切だけど、今は美空のそばにいよう。





気づけば、夜の6時をしめしていた。





そろそろ、夕飯の時間か。





そういえば、美空は最近ご飯食べられていたのだろうか。





「美空。」






「先生…。」





案の定、食事は届いていた。





「美空、食欲はあるか?」





「…うん。大丈夫、食べられる。」





そんなこと言っても、嘘ってことはすぐに分かる。





美空は、きっと俺に心配かけたくないなら無理してそう答えたんだろうけど…。






でも、無理はしてほしくない。





「美空、無理して食べなくていいからな。


食べやすい物を、少しずつ食べよう。


ゼリーとかの方が、食べやすいか?」






「先生には、嘘つけないね…。



ごめんね、いつも心配かけて。」






「何急に改まってるんだよ。



美空、前にも言ったかもしれないけど、何かあった時や辛い時は俺に言ってほしいんだ。



難しいかもしれないけど、辛いことを1人で抱え込まないで欲しい。



大丈夫。



俺は、美空をずっとそばで支えていく。




大切な人を、支えていきたいんだ。」







「先生…。」






美空の瞳から、一筋の涙がこぼれ落ちていた。





きっと、また1人で悩んでたんだろう。





いくら、不安を話すことができたとはいえ、決してかき消されることなんてない。





でも、美空の気持ちが聞けたことは素直に嬉しかった。





「これからも、美空の不安なことや辛いこと、楽しかったことや嬉しかったこと、たくさん色んなお話を聞かせてほしい。」







俺は、気づいたらそう言葉にしていた。





それから、後から美空を抱きしめていた。






「はい。」




美空の涙を拭ってから、冷蔵庫からゼリーを取り出し、美空に食べさせた。
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