一輪の花を君に。2nd
―side美空―

カーテンから差し込む光で私は目を覚ました。


今何時だろう…。


施設にいた時は部屋に時計があったけど、私の部屋には時計がないから、何時なのかがわからないから不便さが少しだけある。



今週は、あまりバイトにも行けてないから時計を買う余裕はないかな…。



まあ、時計がなくても携帯で確認すればいいんだけど…。



そういえば私、最後に携帯見たのっていつだっけ…。



私はリビングへ行ってみた。




あっ、こんなところにあったんだ。



携帯を開くと、見ず知らぬの人からのメッセージが入っていた。




「誰だろう…。」




私は、文章を読んでいると目を疑った。



これは、なんかのいたずらなの?



それとも…。



ちょっと待って。朝だからかな、全然頭が追い付いてこないよ…。



だって、私が小さいときって…。



まだかすかに記憶が残ってる歳でも、私に兄と思い当たる人なんていなかった。




この人は…。誰なんだろうか。




そんなこと考えていると、中森先生が起きてきた。





「美空…。」




「中森先生…。」




私を見てから中森先生は携帯に視線を向けた。




「中森先生、私分からない…。



どうしても、思い出せない…。



私、ずっと一人っ子だと思ってた。



なのに、どういうことなの…。」





気づいたら私はそう言葉にしていて、何かあったのか分からない中森先生にそう話していた。





「美空、ちょっとおいで。」





「えっ?」




「いいから。」





私は近くのソファーに腰を下ろすと、中森先生も私のそばに腰を下ろした。




そうすると、中森先生は少し私の方へ体を向けて、真剣な表情で話し始めた。



「美空、ごめん。」



えっ?



「美空が寝ているときに、携帯がポケットから落ちて、一緒にメッセージも届いて表示されたんだ。


だから、少し読んだ。」





「先生は、昨日から知ってたの?」




「うん。ごめん」



私は、先生を責めることなんてできなかった。




きっと、先生は私にこの現実を知ってほしくないこととか、このメッセージを見て、私がどうなってしまうんだろうとか、考えてくれていたと思うから。





「先生は謝らなくていいよ。


だけど、私はどうすればいい?」




「そうだな…。少し時間をかけて考えてみるのもいいと思うよ。


もし、少しでも会いたいって思っているなら会えばいいと思うし、美空が心配だって言うんだったら俺は美空と一緒に会いに行く。



でも、美空。



1人で抱え込まなくていい。



迷ったりどうしたらいいのか分からなくなったら、いつでも相談にも乗るから。」






「中森先生…。」




「泣くと、かわいい顔が台無しになっちゃうよ。」





そう言って中森先生は親指で私の涙を拭ってくれた。



「先生、ありがとう。」



「いいんだよ。」



私はそれから大翔たちと一緒に学校へ向かった。




私は、朝の中森先生がかけてくれた言葉に少しだけほっとした。




でも、その反面私は兄に会うことが怖かった。



いくら文面がきれいであっても、父親の血を受け継ぐ男性。




だからなおさら、私は兄に会うことが怖かった。




兄と会うとしたら、中森先生に一緒に来てほしいとも思う。




私は、1日中そのことに頭がいっぱいになってしまい、授業に集中することができず気づいたら放課後になっていた。
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