一輪の花を君に。2nd
ーside 美空ー


私は、兄と名乗る人と会う約束をした。



大翔達や、中森先生に会うことは伝えてない。



会うことを言ったら止められるような気がした。



美空にはまだ早い。



そう言われる気がした。



そんな反対の意見を考え、その考えを押し切ってまで兄に会うことを決めたのは、千鶴先生の話と兄が送ってきたメッセージがあったから。




何かあっても、私には大切な人達がいる。



昔の私とはもう違う。



だから、大丈夫な気がした。




待ち合わせの喫茶店に向かうと、兄はもう既に来ていた。





「すみません。お待たせ致しました。」





私は、とりあえず頭を下げた。





「いきなり、呼び出したりして本当にごめんね。」






「驚きましたが、大丈夫です。」






「何か、飲みたい物とかある?」






私は、首を横に降った。





飲み物を頼んで長居するつもりはなかったから。





「そっか。」





「それで…。私に何か。」





「この前の、学校でやった健康診断覚えてる?」





健康診断?



あっ。そういえば学校に入って早々にやったっけ。




兄は、鞄の中から茶色の封筒を出し私に手渡した。




嫌な予感がした。




異様に分厚い茶封筒。




恐る恐る開けてみる。





『心電図の波形に異常があります。』





この一言が、記載されていた。




どういうこと?




喘息で中森先生に言った通りに、診察に通ってたのに。




どうして?




何も、中森先生には言われなかった。


「でも、私。喘息でちゃんと病院にも通ってたのに…。


先生には、何も言われなかった…。」




「まだ、ほんの少しだけ波形が乱れていたんだ。



早期の時点だったから、きちんとした心電図撮らないと気づかなかったんたと思う。




もしかしたら、IgA腎症で腎臓と心臓にまで負担がかかっている可能性があるんだ。



主治医の先生からなんて聞いているか分からないけど、大事なことだからなるべく早く精密検査を受けた方がいいと思って。」





腎臓と、心臓に?




どれだけ、私の体弱いの。




なんで、私ばかり。




産まれた時から、私は幸せになってはいけなかったのかもしれない。




元々、私に幸せになる権利なんてないのかもしれない。




なんだか、家に帰りたくなくなっていた。




悲しくて、辛くて。




「すみません。失礼します。」





「あっ、美空!」




「それから、私あなたと会うのはこれで最後にしたいと思います。



金輪際、連絡もしないで下さい。」





そう言い放ち、私は喫茶店をあとにしていた。
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