一輪の花を君に。2nd
ーside美空ー


長い授業が終わって、私は帰る準備をしていると、1件の着信が入っていた。




留守番サービスに繋げると、相手は中森先生からだった。





『美空、学校お疲れ様。

校門で待ってるから、ゆっくりおいで。』






わざわざ、電話じゃなくてもいいのに。





そう思いながらも、どこか嬉しさがあった。






「美空、嬉しそうだな。」







「大翔。」




私は、突然大翔の声が聞こえて驚きのあまり携帯を落としそうだった。





「驚かせてごめんな。


荷物、家まで持ち帰るよ。」







「いいよ、悪いから。」






「美空?俺に遠慮は無しだろ。


中森先生、もう外で待ってるの?」





「うん。」






「じゃあ、そこまで一緒にいこう。」








「ありがとう。」







それから、私と大翔は自分の下駄箱で靴を履き変えていると、中森先生が来た。







「大翔君、今日は美空発作起きてないかな?」






「俺が見る限り、発作が出てる様子はありませんでした。


今日も、美空の診察よろしくお願いします。」







「任せてください。」







大翔は、保護者みたいに頭を下げた。






「じゃあ、美空。また後でな。」





「うん。」






大翔に小さく手を振ってから、突然身体がふわっと浮いた。







「ちょっと!」






気づいたら、中森先生が私を姫抱きにしてゆっくりと自分の車へと向かった。








「先生、歩けるから大丈夫なんですけど?」







「そんな顔が真っ白で、何が大丈夫だよ。


本当は、ずっと苦しかったんだろ?



立ちくらみも頻繁に起きてたよな。」







1目見ただけで、そこまでの事が分かる中森先生に対して嘘はつけるはずもない。







私は、半強制的に頷いた。







「やっぱりな…。


美空、何かあったらすぐに連絡してって言っただろう?」







「だって、今日は外来の担当の先生が中森先生しかいない日だから、忙しいかなって思って…。


本当は、電話しようと思った。




咳もずっと我慢してて、大翔にバレたら速攻で中森先生に電話されるって思ったの。





先生…ごめ…。」







私が、言い終わる前にさらに中森先生の私を抱きしめる力が強くなった。








「美空、ありがとう。


俺のこと、考えてくれて嬉しい。



けどな?



辛いものを、1人で我慢しないでほしいんだ。



1人で抱え込まないでほしい。




俺は、美空に何かあったことを知らない方がよっぽど辛いよ。




だからさ?



今度からは、何かあったり少しでも咳や辛さがあったら、すぐにでも連絡してほしい。」








「うん。」







私は、嬉しくて涙が止まらなかった。







先生や、誰かにこんなに大切に思われていることはこんなにも幸せなんだ。








いつもと違う幸せを感じる。





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