一輪の花を君に。2nd
私は、気づいたら中森先生にもらったネックレスを触っていた。



「このネックレス、中森先生と約束したネックレス。」



そうだ。



中森先生と出会った時から1度も中途半端な気持ちで私と関わったことなんてなかった。



いつでも、私の気持ちに真剣に向き合ってくれていた。




それに、私の気持ちを誰よりも分かろうとしてくれていた。



苦しいくらいに、私を思ってくれている人なんて他にいないよね。




「先生…。」




「美空。」




私を抱きしめる力が少しだけ強くなったのが分かった。





「私、ちゃんと検査を受ける。


逆を言えば、早めに異常がわかったからいい機会なのかもしれないよね。」




「安心して。いつだってそばにいるから。


そしたら、さっそく詳しく心電図の検査するよ。


今から検査室に一緒に行こう。」



中森先生に車いすに乗せられ、1階の検査室へと向かった。



検査は30分で済んだ。



その後、エコーの検査もして病室に戻ってきた。



「美空、今日は疲れたでしょう。結果はまたあとの方がいいかな?」



「大丈夫。今教えてください。」



中森先生は隣の椅子に腰を掛け、優しく私の手を握った。




「たしかに、ほんの微かだったけど心電図の乱れ、つまり不整脈が生じていた。



少しだけ、美空の心臓はほかの人よりもゆっくりな動きをしていることが分かった。



きっと、腎臓の病気がなかったら元々の美空の血圧は低いんだと思う。



今すぐに治療が必要なわけでもないから、少し様子をみていこうと思うんだ。



もし、息を吸うのが苦しいとか胸が痛いとか自覚症状が出たらすぐに教えて。」




よかった。




ちゃんとしたことがわかって。




それに、これ以上に何か病気を抱えることにならなくて。



やっぱりちゃんと中森先生に相談してよかった。



「先生、ありがとう。」



「何も。美空の救いになれてよかった。



とにかく美空。また何か病気のこととか体のこと、その他の不安なこととかあったら、1人で抱え込まずすぐに教えて。


いつでも、どこにいてもすぐに美空のところに駆けつけるから。」




「ありがとう。」




私がそう返事をすると、私の頭を優しく撫でてくれた。





「美空、今日は海の家のバイトあるのか?」





私は、週に3回。海の家でギターの弾き語りのアルバイトをしていた。




高校生になった今、普通に働ける歳にもなったから最近はギターだけではなくて、接客やお店裏で働くことも少しずつ増えてきた。





中学生の頃、歳を偽ってアルバイトをしていたことは店長にもちゃんと話した。




店長も、話がわかってくれる人だったから、なんで私がギターのバイトを始めたのか、きっかけやどんな気持ちで、お客様を喜ばせていたのかゆっくりと話を聞いてくれた。
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