一輪の花を君に。2nd
♯3
カーテンから差し込む光に目を覚ました。
時間を確認すると時刻は朝の7時を示していた。
ベッドで寝ていたはずの美空はいなくて、スーツに着替え美空を探しに皆のいるリビングへ向かった。
「中森先生。おはよう。」
相変わらず、美空の笑顔には弱い。
「おはよう。」
美空に目をやると、やっぱり制服っていいよなとか考えてしまう。
美空の学校は紺色のセーラー服で、スカーフが白だった。
いつも見てはいたけど、やっぱり美空が着ると華になるよな。
美味しいトーストの香りと、暖かいコーンスープの香りが温かい朝を感じる。
「美空、ご飯食べ終わったら診察するね。」
「先生、今日はここに帰ってこないの?」
まっすぐに美空から見つめられて、正気を失いそうになった。
「美空が望むなら、ここへ帰ってくるよ。」
君が、そう望んでくれるのなら。
俺は、いつだって君のそばにいたいと思う。
「違うの。今日はお友達と放課後の約束があったから、先生がここに帰ってきてくれるなら、早めに帰ろうと思っただけ。」
そういうことか…。
正直、へこむ。
まあ、美空が学校で友達と仲良くやってくれているならいいんだけど…。
大翔「美空。それでも、あまり遅くならないようにね。
一緒に遊ぶ奴って雨音か?」
「そうだけど…。」
「なら、俺も安心できる。
先生、雨音っていう子は面倒見もいいし美空の病気のことも知ってます。
絶対、美空には無理させないような子なので大丈夫です。」
大翔君は、心配していたことを察したかのように美空の友達のことを教えてくれた。
大翔君がそこまで信頼しているようなら安心できる。
「じゃあ美空、診察するな。」
ご飯を食べ終え、部屋に戻る美空の後を追い診察を始めた。
「少しだけ喘鳴が出てるけど苦しくはない?」
ほんの微かに聞こえる喘鳴。
吸入すれば落ち着くとは思うけど…。
「大丈夫。」
そう笑ってくれているけど、正直美空の『大丈夫』は信用できないんだよな…。
だけど、今日は熱も高くないし顔色もそこまで悪くないから今日は美空の言葉を信じるか。
「分かった。何かあったらすぐに連絡するんだからね。」
「うん。わかってる。発作出そうになったらちゃんと吸入もするから安心して。」
「分かった。準備は終わった?」
「うん。」
「そしたら行こうか。」
美空と同じ学校の大翔君も一緒に車に乗せ、2人の通う高校へ向かった。