一輪の花を君に。2nd
ーSide 美空ー



「そしたら、大翔君。美空のことよろしくね。」



中森先生は大翔にそう伝え、私にも無理はしないようにと念押しし病院へ向かった。



「美空、先生も言ってたけど無理はするなよ。何かあったら俺にいうんだからね。」



「ありがとう。」



正直、大翔と一緒の学校にして安心している。




~回想~



それは中学3年生の頃



まだ寒さが厳しい季節で、周りも受験でピリピリしていた頃だった。



「美空は、どこの高校に行くの?」



私たち同期5人は皆同じクラスで、将来のことをよく話していた。



私は、中学に入った時から行きたい高校を決めていた。



そのために必死に勉強もした。




その高校に入りたかったのは制服や校風もあったけど、それ以上に魅力を感じる授業もあった。




私は、その時からギターを弾くのが好きでもっと勉強したいと思った。




ここは、選択授業でギターや管弦楽団の勉強ができる授業があったから。




そのために、私はここを選んだ。



進学校で、日本のしきたりや一般常識、他の高校では教えてもらえないようなことを教えてもらえることにも魅力を感じていた。




「俺も、そこへ行く。」



そう言って、大翔は私の通う学校を選んだ。



これが、私の記憶に残っている中学3年生の忘れられない冬の思い出。




「そういえば、大翔はどうしてここにしようと思ったの?」




クラスに向かう途中に大翔にそう聞いていた。




「行きたいところもなかったしな。それに、お前のこと心配だったから。



俺がいないところで無茶ばっかりするんじゃないかって。



それに、美空のいないところに行ったって楽しくなさそうだから。」




大翔は視線をそらし優しく笑った。




「そっか。」




「美空、大翔おはよう。」




私たちに声をかけてきたのは雨音だった。




「おはよう。雨音。」




「おはよう。」




着席と同時に、授業開始のチャイムが鳴った。




それから、長い1日がはじまった。
< 39 / 41 >

この作品をシェア

pagetop