一輪の花を君に。2nd
規則正しい機械の音、胸には色んなシールみたいなものが貼られてて、手の甲には点滴が入っていた。






異様な身体のだるさに私は、目を覚ました。






「中森先生…。」






病室には、誰もいなくて一気に不安になった。






私は、怖くて心電図のシールを外し点滴を転がしながら中森先生を探した。











薄暗い廊下。




足元が暗くてよく見えない。





ナースステーションには、幸い3人しか人がいなくて、気づかれずに通ることが出来た。









「きゃっ!」





誰かにぶつかってしまった。






後ろに倒れそうになったのを、手を引っ張られたおかげで、大事にはいたらなかった。









「こんばんは、美空ちゃん。



覚えてるかな?」







誰?





でも、見た事のあるようなないような。








「中森誠の父親です。」







「先生!」







「思い出してくれたかな。電車の中で1度だけ会ったことがあるよね。




それより、どうかした?」







「それが…



中森先生どこにいるか知りませんか?」








「美空!」






後ろから、声が聞こえて振り返ると中森先生に後ろから抱きしめられていた。







「探しただろう。



どこに行ってたの。」







「それは、私のセリフだよ。



先生こそどこにいたの。」







「下の売店で、美空の飲み物買ってきたんだ。


よかった…。そんな状態でまた病院を抜け出したんじゃないかって思ったら、血の気がひいたよ。」









「心配しすぎ。


流石にだるいから、抜け出せない…」





先生は、私の表示を見るなりすぐに手を額にあてた。






「熱上がったみたいだな。



車椅子持ってきたから、病室に戻ろう。」







「うん…。」







それから、中森先生にゆっくり押されながら私は病室へ戻った。






「美空、ちょっと話しておきたいことがあるんだ。」





病室に着いて、私をゆっくりとベッドに戻してから、中森先生はベットサイドにおいてあった椅子に腰を下ろし、笑顔だった表情が、真剣な表情に変わった。







一気に不安が私を襲った。







「何?」







「今回の熱なんだけど…。



腎臓が悪化してるかもしれない。



今までの尿検査で、ずっと尿蛋白が出続けていて、血圧も高い状態なんだ。」








『透析』







この単語が、私の頭をよぎった。








それから、この病気が診断ついた時の、七瀬先生の言葉も、頭をよぎる。








『透析を受けたら、5年生存率は40%』






「透析…ですか。」







私は、中森先生の顔を見ることが出来なかった。







先生の優しい表情をみたら、不安で涙が溢れ出てきそうだったから。






辛い時、優しくされたら心が弱くなりそうだから。






それに何より、中森先生に対して笑顔を見せられないから。
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