一輪の花を君に。2nd
ーside中森ー
気づいたら、美空は俺の膝の上で寝てしまった。
普段は、大人っぽすぎるから、突然こういう子供みたいに可愛いことをされると、つい襲いそうになってしまう。
美空のギャップは、1番弱い。
そっと美空を、ベッドに寝かせてから美空の前髪を整え、ゆっくり布団をかけた。
「こんにちは。」
中に入ってきたのは、七瀬先生だった。
「美空の様子、どうでしたか?」
「今は、落ち着いています。
でも、美空にとって1番の恐怖が、『死ぬこと』ってことが分かりました。
美空はいつも、死への恐怖と直面していたんですね。
呼吸困難になったら、患者さんは死への恐怖があるって、大学の講義で学んだはずだったのに、そんな初歩的なことを忘れていました。
原点に戻ることって、大切ですよね。
改めて、気付かされました。」
「そうですね…。
私達医者は、いつしか事務的に患者さんを診るようになって、気持ちまで気を向けることができなくなってたんですね…。
医者としての仕事が、ハードなら尚更ですよ。
けど、美空の気持ちと向き合うことを忘れたことは1度もありません。
私たちの施設は、たくさんの子供たちが毎日のように送られてきます。
それはまるで、戦場みたいなもので泣いたり目を離したら危ないことをしていたりと、自殺願望のある子もたくさんいます。
美空も、そうでした。
美空が、この施設に初めて来た時にこの子の瞳は悲しそうで、人を信じていないような瞳をしてました。
信じるどころか、人が大っ嫌いだったんです。
でも、どこまでも真っ直ぐで心は真っ白で、何にも染められていない、優しい子だったんです。
毎日毎日、死ぬことを考えていた美空の口から『死ぬことが怖い』って聞けたなら、私は嬉しいです。」
「先生…。」
美空は、目を覚まし身体を半分だけ起こした。
「美空。久しぶりね。」
「七瀬先生…。
あ、この花ってもしかして…。」
「そう、千華が育てたチューリップよ。」
「こんなに綺麗に咲いたんだね。」
そう言って、花を見てにっこりと微笑む美空。
そんな姿が、たまらなく愛おしくて後ろから抱きしめていた。
「ちょっと…。」
「ごめん…。ごめんな。」
なぜか、涙が止まらなかった。
俺は、忘れかけていた。
美空が昔、父親から暴力を受けて何度も自殺をしようとしていたことを。
そして何より、男性の大人が嫌いだったっていうことを。
まだ、幼かった美空は『死ぬこと』ばかり考えていたんだったよな…。
でも、今は『死ぬことが怖い』って言ってくれた。
その事が、たまらなく嬉しかった。
でも、辛いこともたくさんあってまだまだ美空には負担がかかっている。
好きな人が辛いと、自分も辛くなるってそういうことなのか。
初めて体感した。
こんなに苦しくて、胸が張り裂けそうな痛み。
この思いは、ただただ美空に生きてほしい。
美空を失うことが怖くて、たまらなく辛いからこんなに苦しいんだ。
気づいたら、美空は俺の膝の上で寝てしまった。
普段は、大人っぽすぎるから、突然こういう子供みたいに可愛いことをされると、つい襲いそうになってしまう。
美空のギャップは、1番弱い。
そっと美空を、ベッドに寝かせてから美空の前髪を整え、ゆっくり布団をかけた。
「こんにちは。」
中に入ってきたのは、七瀬先生だった。
「美空の様子、どうでしたか?」
「今は、落ち着いています。
でも、美空にとって1番の恐怖が、『死ぬこと』ってことが分かりました。
美空はいつも、死への恐怖と直面していたんですね。
呼吸困難になったら、患者さんは死への恐怖があるって、大学の講義で学んだはずだったのに、そんな初歩的なことを忘れていました。
原点に戻ることって、大切ですよね。
改めて、気付かされました。」
「そうですね…。
私達医者は、いつしか事務的に患者さんを診るようになって、気持ちまで気を向けることができなくなってたんですね…。
医者としての仕事が、ハードなら尚更ですよ。
けど、美空の気持ちと向き合うことを忘れたことは1度もありません。
私たちの施設は、たくさんの子供たちが毎日のように送られてきます。
それはまるで、戦場みたいなもので泣いたり目を離したら危ないことをしていたりと、自殺願望のある子もたくさんいます。
美空も、そうでした。
美空が、この施設に初めて来た時にこの子の瞳は悲しそうで、人を信じていないような瞳をしてました。
信じるどころか、人が大っ嫌いだったんです。
でも、どこまでも真っ直ぐで心は真っ白で、何にも染められていない、優しい子だったんです。
毎日毎日、死ぬことを考えていた美空の口から『死ぬことが怖い』って聞けたなら、私は嬉しいです。」
「先生…。」
美空は、目を覚まし身体を半分だけ起こした。
「美空。久しぶりね。」
「七瀬先生…。
あ、この花ってもしかして…。」
「そう、千華が育てたチューリップよ。」
「こんなに綺麗に咲いたんだね。」
そう言って、花を見てにっこりと微笑む美空。
そんな姿が、たまらなく愛おしくて後ろから抱きしめていた。
「ちょっと…。」
「ごめん…。ごめんな。」
なぜか、涙が止まらなかった。
俺は、忘れかけていた。
美空が昔、父親から暴力を受けて何度も自殺をしようとしていたことを。
そして何より、男性の大人が嫌いだったっていうことを。
まだ、幼かった美空は『死ぬこと』ばかり考えていたんだったよな…。
でも、今は『死ぬことが怖い』って言ってくれた。
その事が、たまらなく嬉しかった。
でも、辛いこともたくさんあってまだまだ美空には負担がかかっている。
好きな人が辛いと、自分も辛くなるってそういうことなのか。
初めて体感した。
こんなに苦しくて、胸が張り裂けそうな痛み。
この思いは、ただただ美空に生きてほしい。
美空を失うことが怖くて、たまらなく辛いからこんなに苦しいんだ。