一輪の花を君に。2nd
「どうして泣いてるの?」






不安な表情で美空は、俺の涙を拭いた。






「何も、不安に思うことないよ。



つい、嬉しくて涙が止まらなかったんだ。



美空、これからもずっと一緒に生きていこう。」





嬉し涙と、美空がいなくなってしまったらという恐怖が複雑に入り混じっていた。







でも、美空には嬉し涙と言っていた。








「うん!」



美空は、俺に笑いかけてくれた。




しっかりしないとな。





美空の笑顔は、俺の元気の源だ。






「失礼します。」






声がして、返事をすると大翔君と理人君が入って来た。





「こんばんは。これ、美空の荷物です。」






「いつもありがとう。」







「先生、美空は大丈夫でしょうか?」







「そうだなぁ…。


簡単に、大丈夫とは言えないけど美空は頑張ってるよ。


生きたい思いが、美空を動かしている。」








「美空が…ですか?」







「ずっと一緒だった理人君も、驚くくらいだから、美空は相当成長したんだね。」






「美空は、1番自殺願望が強くて、注意深く見ていないと、死んじゃいそうで怖かったんです。


手首には、深いカッターの傷が今でも残ってる。



でもこれは、美空が目の前の現実と戦った跡でもあるんですよね。」






理人君は、そう言って美空の手を握った。






少し、理人君の表情が寂しそうに見えた。





「理人…。

あの、美空が目を覚ましたら伝えてください。

明日また、翔太と香音も連れてお見舞いに来ます。」







「分かった。


理人君。


何かに、悩んでるなら誰かに相談しな?


俺でも、相談に乗るから。


あまり、溜め込みすぎないようにね。」







理人君は、頷いた。





理人君が悩んでるなんて珍しいな。




理人君は、施設にいた頃クールであまり周りに関心がないように見えるけど、本当は誰よりも周りが見えて、誰よりも人の言葉や心に敏感だった。






美空もそうだった。





周りのことを優先にして、自分のことを後回しにして辛い思いをしていた。







もし、そうだとしたら何か教えてほしいけど…。





理人君にとって他人である俺は踏み込んでいいのか分からない。





だから、ここは皆に任せた方がいいのか。






「あの…。」





理人君は、何かを決心してから俺に声をかけた。





「ん?」





「…ここだと、美空が起きるかもしれないから別室に移れますか?」






「いいよ。」





「大翔も。」




「あぁ。」
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