シンデレラの魔法は解けない
彼は足を止め、ゆっくり振り返る。
スパイラルパーマの伸びた髪が茶色に輝き……
その瞳は大きく見開かれ、あたしを捉えている。
そして、
「藍……ちゃん」
発せられたその声は、微かに震えていた。
……やっぱり平さんだ。
あたしの大好きな、平さんだ!
平さんは明らかに狼狽えていた。
その姿を、本当に見られたくなかったのだろう。
だけど、あたしは何も思わない。
むしろ、いつもきちんとしている平さんを尊敬する。