シンデレラの魔法は解けない
「来てくださって、ありがとうございます」
あたしは笑顔で平さんに告げる。
「平さんが来てくださったから、あたしは安心して家に帰れそうです」
平さんは口をきゅっと結んであたしを見ていた。
何か考えている様子だった。
そして、少し間を置いてあたしに告げる。
「藍ちゃん、しばらく俺の家に居なよ」
「……え?」
「ストーカーかもしれないのに、一人でいるのは危険だよ」
あたしはまじまじと平さんを見る。
素敵じゃない平さんは、ちょんまげ姿のまま微かに頰を染めてあたしを見ていた。
素敵じゃない平さんなのに、やっぱり胸のときめきは変わらなかった。