シンデレラの魔法は解けない
「飲みに行くっていったら、この辺りじゃどこ行くの?」
「うーん……」
林さんとよく行く居酒屋の名前を伝えようと思ったが、ハッと気付く。
相手は原あかりだ。
そんな大衆店に行かせるなんて、ありえない。
高級な居酒屋……
高級なバー……
必死で頭を働かせるあたしに、
「あんた、別に気にしなくてもいいんだよ」
面倒そうに原さんは言う。
「あたし、胡散臭い慶太が行きそうなお洒落なバーより、おっさんが行く寂れた居酒屋のほうが好きだし」
思わぬ言葉に、原さんを凝視した。
綺麗でおしとやかな原あかりにあらぬ言葉だ。
それとも、あたしのことを気遣ってくれているのだろうか。