シンデレラの魔法は解けない
「藍、大変だったね」
「平さんに出会えて良かったね」
友達は口々にそう言ってくれた。
その言葉が素直に嬉しかった。
あんなに出席するのが嫌だった結婚式だが、出席して良かったと思う。
これも全て平さんのおかげだ。
それから飛ぶように時間は過ぎて、平さんと友達と楽しい時間を過ごして、すぐにお開きの時間となる。
平さんの仕事の資料を拾っただけなのに、平さんはその恩を何十倍、何百倍にして返してくれた。
そして、あたしの心にその存在を深く刻み付けて。
「平さん、ありがとうございました」
努めて笑顔でお礼を言う。
最後くらい笑顔で別れなきゃと思うのに、気を抜くと顔がくしゃっと歪んでしまいそうだった。