シンデレラの魔法は解けない
仕事を終え、街をぶらついた。
携帯を出して、メール画面を開いては、またしまう。
さっきから、この行動を何十回と繰り返している。
そしてこの行動とともに、頭を必死で働かせた。
平さんになんてメールを送ろう。
会いたいです?
それじゃ、あからさまだ。
ご飯にでも行きませんか?
嫌って言われたらどうしよう。
携帯に触れるたびに手が震え、チキンのあたしは何も出来ない。
そんなことばかりを考えて、目的地もなくぶらついていたあたしは……
気付いたら、ひと通りのない道に入り込んでいた。
そこで偶然ベンチを見つけ、座り込む。
そして再び携帯を取り出した。
ここで推敲して、平さんにメールを送ろう。
メールを送るまで、ここを離れないんだから!
そう決心したあたしの耳に、男性の声が飛び込んできた。