日だまり堂へようこそ
雪斗は溜め息が出た。
「そんなわけあるわけ無いじゃないですか。」
今度は女性の方が眉を潜める番だった。
「どういうことですか?」
すると雪斗は疲れた顔を浮かべ言う。
「だって父さん、多分俺のことあんまり好きじゃなかったんです。実際父さんと俺あんまり話さなかったし。けど父さんは姉とはよく話していたんです。姉はなんでも出来て美人で性格もよくて…。
だから俺は大嫌いだった。なんでも出来る姉さんも。姉さんとしか話さない父さんも。」
何を話しているのだろう。彼女からしたら意味の分からない話をしているに違いない。
思わず彼女を見る。彼女は困ったように雪斗を見ていた。その顔で我に返った。そして少なからず動揺していたいうことに気づいた。だってこんな話普段なら絶対しないからだ。
「すみません。意味分からないですのね‥。」
彼女は優しく微笑んだ。
「いいえ構いません。…そうか。この時計はお父様から頂いたものですね‥。」
彼女はそこで一呼吸置いて言った。
「本当に答えにくいものを聞くのですが、もしかしてお父様はお亡くなりにならているのではないですか?」
その言葉に雪斗は驚いて彼女を見つめた。
彼女はにっこりと笑った。
「図星みたいですね。」
雪斗は恥ずかしくなって俯いた。
「では、話を戻しましょうか。」
彼女が言う。
「あなたはお父様のことが嫌いなのですか?私にはそうは思えなかったのですかが。」
勝手なこと言うな。
そんなことを思ってしまう。
そしてそんな雪斗の思いを彼女には伝わったらしい。
「だってこの時計には嫌悪感とかそういう感情は視えなかったです。
それにそもそも嫌いな人に罪悪感なんて抱くんでしょうか。」
「そりゃそれくらい…!」
彼女は言い返す雪斗を遮るように言った。
「物は正直です。もしそうでないというのであればそれはあなたが素直になれてない。あなたが現実と向き合えてない証拠です。」
「現実…。」
彼女の言葉を聞き返す。予想外過ぎて。
「えぇ。この時計から深い悲しみが視えたんです。多分あなたの。
あなた本当はお父様のこと大好きだったんじゃないんですか?」
「そんなこと無いってさっきから言ってるじゃないですか。俺は別に…。」
彼女はそう言い返す雪斗を困ったような哀れむようなそんな顔をしていた。
「なっなんですか?」
つい不満そうな声が出る。
「それが現実に向き合えてない証拠です。ちゃんと向き合って前に進みましょう。
物は嘘はつきません。私が話していることは事実です。確かにこの時計からは深い深い悲しみが確実に視えるんです。
あなたはお父様を嫌いだ。そう思うことで悲しみから必死に逃げようしたんじゃないですか?
あんな人嫌いだ。だから俺悲しむ必要なんて無い。そう思ってきたんじゃないですか?そんな必要無いんです。悲しみは噛み締めましょう。かみしめて前に進みましょう。
私は一緒に悲しむなんてそんなことは出来ませんが、けれど側にいることは出来ます。それにきっとあなたの周りには一緒に悲しんでくれる人がいるはずです。
大丈夫。その悲しみはあなたの一部です。あなたという人間を作る上で大切なものです。悲しんで悲しんで前に進んで下さい。受け入れて下さい。
…もう大丈夫そうですけど。」
「えっ…。」
雪斗が頬に触れる。熱いものがながられている。視界がぼやけている。
俺、泣いてる…?
そう気づいた。
そう思った瞬間止まらなくなった。
父さんごめん。父さんのこと大好きだよ。嫌いなんかじゃない。不器用で優しくてそんな父さんが大好きだ。ほんとにごめん。嫌いなんて言ってごめん。俺、父さんともっと話したかった。父さんを敬遠なんてしなけりゃ良かった。父さんごめん。大好きだよ。
雪斗はいつまでもいつまでも泣いていた。
気づくと彼女は雪斗の背中を撫でていた。
「そんなわけあるわけ無いじゃないですか。」
今度は女性の方が眉を潜める番だった。
「どういうことですか?」
すると雪斗は疲れた顔を浮かべ言う。
「だって父さん、多分俺のことあんまり好きじゃなかったんです。実際父さんと俺あんまり話さなかったし。けど父さんは姉とはよく話していたんです。姉はなんでも出来て美人で性格もよくて…。
だから俺は大嫌いだった。なんでも出来る姉さんも。姉さんとしか話さない父さんも。」
何を話しているのだろう。彼女からしたら意味の分からない話をしているに違いない。
思わず彼女を見る。彼女は困ったように雪斗を見ていた。その顔で我に返った。そして少なからず動揺していたいうことに気づいた。だってこんな話普段なら絶対しないからだ。
「すみません。意味分からないですのね‥。」
彼女は優しく微笑んだ。
「いいえ構いません。…そうか。この時計はお父様から頂いたものですね‥。」
彼女はそこで一呼吸置いて言った。
「本当に答えにくいものを聞くのですが、もしかしてお父様はお亡くなりにならているのではないですか?」
その言葉に雪斗は驚いて彼女を見つめた。
彼女はにっこりと笑った。
「図星みたいですね。」
雪斗は恥ずかしくなって俯いた。
「では、話を戻しましょうか。」
彼女が言う。
「あなたはお父様のことが嫌いなのですか?私にはそうは思えなかったのですかが。」
勝手なこと言うな。
そんなことを思ってしまう。
そしてそんな雪斗の思いを彼女には伝わったらしい。
「だってこの時計には嫌悪感とかそういう感情は視えなかったです。
それにそもそも嫌いな人に罪悪感なんて抱くんでしょうか。」
「そりゃそれくらい…!」
彼女は言い返す雪斗を遮るように言った。
「物は正直です。もしそうでないというのであればそれはあなたが素直になれてない。あなたが現実と向き合えてない証拠です。」
「現実…。」
彼女の言葉を聞き返す。予想外過ぎて。
「えぇ。この時計から深い悲しみが視えたんです。多分あなたの。
あなた本当はお父様のこと大好きだったんじゃないんですか?」
「そんなこと無いってさっきから言ってるじゃないですか。俺は別に…。」
彼女はそう言い返す雪斗を困ったような哀れむようなそんな顔をしていた。
「なっなんですか?」
つい不満そうな声が出る。
「それが現実に向き合えてない証拠です。ちゃんと向き合って前に進みましょう。
物は嘘はつきません。私が話していることは事実です。確かにこの時計からは深い深い悲しみが確実に視えるんです。
あなたはお父様を嫌いだ。そう思うことで悲しみから必死に逃げようしたんじゃないですか?
あんな人嫌いだ。だから俺悲しむ必要なんて無い。そう思ってきたんじゃないですか?そんな必要無いんです。悲しみは噛み締めましょう。かみしめて前に進みましょう。
私は一緒に悲しむなんてそんなことは出来ませんが、けれど側にいることは出来ます。それにきっとあなたの周りには一緒に悲しんでくれる人がいるはずです。
大丈夫。その悲しみはあなたの一部です。あなたという人間を作る上で大切なものです。悲しんで悲しんで前に進んで下さい。受け入れて下さい。
…もう大丈夫そうですけど。」
「えっ…。」
雪斗が頬に触れる。熱いものがながられている。視界がぼやけている。
俺、泣いてる…?
そう気づいた。
そう思った瞬間止まらなくなった。
父さんごめん。父さんのこと大好きだよ。嫌いなんかじゃない。不器用で優しくてそんな父さんが大好きだ。ほんとにごめん。嫌いなんて言ってごめん。俺、父さんともっと話したかった。父さんを敬遠なんてしなけりゃ良かった。父さんごめん。大好きだよ。
雪斗はいつまでもいつまでも泣いていた。
気づくと彼女は雪斗の背中を撫でていた。