日だまり堂へようこそ
店内は薄暗く壁にはそこら中に棚が備え付けられていた。そしてその棚の上にはオルゴールやぬいぐるみなど様々なものが雑多に置かれていた。真ん中にはレジの置いてあるカウンターと木でできた2脚の椅子と机。
雪斗はそこに通された。
「それでご用件は何ですか?」
女性がニコニコと聞いてくる。
雪斗は気が進まないながらも、リュックから腕時計を取り出した。
「これを修理してほしいんですけど。」
雪斗が時計を女性に渡すと女性は時計を手に取る。
「素敵な時計ですね。誰かからの頂き物ですか?」

頂き物ね…。

雪斗の顔は自然と苦笑いのような泣きたいような微妙な顔になる。
女性は不思議そうな顔をした。
「違うんですか?」
どう答えるのが正しいのだろう。
雪斗が答えに困っていると女性は何かを察したんだろう。
「すみません。もしかして答えにくいことを聞いてしまいた?ただ、ちょっと気になったもので。」
深々と謝ってくる。
雪斗はなんだか申し訳なくなった。
「いえ、別に…。それよりすぐなおりますか?」
とっさに話をずらす。
「あっそうですよね。すみません。多分大丈夫ですよ。すぐになおさせて頂きます。とりあえずこちらに連絡先とお名前をお願いできますか?」
と机の上に無造作に置いてあった白いメモ用紙を渡された。
雪斗はそこに自分の名前と携帯の番号を書く。
女性はその紙を受け取ると
「木暮雪斗さま、ですね。かしこまりました。それでは治りましたらご連絡致しますので。」
「はい。分かりました。」
雪斗はそれだけで言うと日だまり堂を後にした。
そして帰りながら溜め息が出た。
< 7 / 11 >

この作品をシェア

pagetop