日だまり堂へようこそ
しばらくしたある日の夕方雪斗は商店街を歩いていた。
日だまり堂から連絡があり、時計を取りに行くのだ。
雪斗は日だまり堂の前に着くと、扉を開けた。
カランカランとベルの音が鳴る。
すると、奥からこの間と同じ女性が出てきた。彼女はふんわりと微笑んだ。
「いらっしゃいませ。木暮雪斗様、ですよね?時計を取りに来られたということでよろしいですか?」
どうやら雪斗のことを覚えていたらしい。雪斗は
「あっあぁ。はい。」
と頷く。
すると女性は
「かしこまりました。只今持って参りますのでそちらに腰をかけてお待ち下さい。」
雪斗は女性の言うとおりそこの椅子に座る。
彼女は奥に行くとすぐに戻ってきた。
手には雪斗の預けた時計。
「こちらでよろしいですか?」
女性が穏やかに聞いてくる。
「はい。大丈夫です。あのいくらですか?」
雪斗がお金を払おうとすると彼女が言った。
「お客様、当店は初めてのご利用ですよね?」
「はい…?」
彼女は雪斗が頷くのを確認すると軽やかに言った。
「それではお代は半分…いえ無しで構いません。ただし」
ここで女性が言葉を切る。十分な間を持たせ言った。

「この時計に対するあなたの思い出を語って頂くことは出来ませんか?」

雪斗はつい彼女の顔をみる。
彼女ははじめと変わらない笑顔で微笑んでいる。
「話しづらいですか?では私の方から話さしていただきますね。」
彼女はそう言い、また微笑んだ。
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