日だまり堂へようこそ
「此方頂き物とのことですか、誰からの頂き物ものでしょうか。私にはわかりません。けれどこちらの時計の贈り主に対しなにかしら罪悪感を感じている。違いますか?」
雪斗は驚きで目を見開く。
確かにその通りだ。二人じゃなくて自分が生きているという罪悪感。けれどそんな素振りは一度も見せてないはずだ。少なくともこの人の前では。なのになんで…。
彼女は少し困ったように微笑んだ。
「やはりそうなんですね。時計から視えた通りです。」
その発言に雪斗はつい眉を潜める。
「視える…?」
そう言うと彼女はにっこりと微笑んだ。
「あぁ。私、物に触るとその物に込められた思いや使った人の思いが視えるんです。そういう体質なんです。」
当たり前のように返されるけれど雪斗には彼女の言っていることが理解出来なかった。
何を言っているのか分からない。そんな目で彼女のことを見てしまう。
すると彼女は少し困ったように笑った。
「信じれませんよね。信じるか信じないかは受け取る人の自由だと思います。だからこれから話すことをどう思いどう考えるかはあなたの自由です。ただ私はこの時計から視えたものを私の考察を踏まえ、話す。それだけです。
ただあなたがこの時計の贈り主に対し罪悪感を感じていることには変わりないですよね?」
その言葉に雪斗は何も答えられなくなった。全くもってその通りだったからだ。
雪斗は返事をする代わりに俯く。
女性はまた静かに話し始めた。
「そしてあなたの罪悪感とともに贈り主からあなたへの愛を感じるんです。きっとその贈り主の方はあなたのこと考えながら必死で選んだと思います。」
女性は暖かい笑みで雪斗のことを見ていた。
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