染 光 ハナビ
『名取ぴっかって、それ本名なの?』
高校生になって、二年目の春のこと。
新しいクラス名簿を見て新しい教室へと足を踏み入れようとした私に、そんな声が降ってきた。
びっくりして振り返ると、
知らない男の子がじっと私を見つめている。
『…私?』
『うん』
『…ぴっかは、あの、ニックネームで…』
『あ、そうなんだ。本名は?なんて言うの?』
『…ひかり。名取 光里、です』
『ふぅん』
『あの、なにか…?』
『いや、ぴっか。可愛いなと、思ってて』
────恋に。
恋に落ちるにはいくらなんでも速すぎるんじゃないのかって、
そう戸惑ってしまうほどに、速く、落ちた。