悩ましきは猛進女の撃甘プロポーズ

女がヒシッとタオルを掴んでいるではないか。
ちなみに、裸にタオルではない。

昨日、あれから百合子に相談したら、「普通にスーツでいいのでは? そのHAPPYタオルを首に巻けば、HAPPYを纏う、になると思うわ」と言われたのでそうした。

正解だった。もし、何も聞かず来ていたら、僕一人が「御用!」とお縄になっていただろう。

「本当に申し訳ないが、私が愛しているのは仕事だ」

ここはキッパリ言い切る。

「じゃあ、二番目に愛して下さい!」

何てしつこい女なのだろう。

「とにかく、知り合ったばかりの君と結婚する気は、全くない」

当たり前だ。名前すらさっき初めて知った女だ。付き合いも何もかもすっ飛ばし、何が結婚だ。

「あっ、なら」と女の顔がパっと輝く。

「これからドンドン私のこと知って下さい。私、諦めませんから」

タオルから手を離すと、女はルンルンと聞こえてきそうな足取りで、人込みに消えた。

呆気に取られ、その姿を見送っていると、ポンと誰かに肩を叩かれる。

< 10 / 88 >

この作品をシェア

pagetop