悩ましきは猛進女の撃甘プロポーズ
女がヒシッとタオルを掴んでいるではないか。
ちなみに、裸にタオルではない。
昨日、あれから百合子に相談したら、「普通にスーツでいいのでは? そのHAPPYタオルを首に巻けば、HAPPYを纏う、になると思うわ」と言われたのでそうした。
正解だった。もし、何も聞かず来ていたら、僕一人が「御用!」とお縄になっていただろう。
「本当に申し訳ないが、私が愛しているのは仕事だ」
ここはキッパリ言い切る。
「じゃあ、二番目に愛して下さい!」
何てしつこい女なのだろう。
「とにかく、知り合ったばかりの君と結婚する気は、全くない」
当たり前だ。名前すらさっき初めて知った女だ。付き合いも何もかもすっ飛ばし、何が結婚だ。
「あっ、なら」と女の顔がパっと輝く。
「これからドンドン私のこと知って下さい。私、諦めませんから」
タオルから手を離すと、女はルンルンと聞こえてきそうな足取りで、人込みに消えた。
呆気に取られ、その姿を見送っていると、ポンと誰かに肩を叩かれる。