悩ましきは猛進女の撃甘プロポーズ
「驚きだわ! ゴミ男(お)に春って嘘でしょう!」
従妹の桔梗だ。僕より五つ下だから……さっきの神崎という女と同じ年か……。
だが、全く違う。こいつはどちらかと言えば、竜崎に属する部類だ。
秘書課故か、社内でも目立つ存在で美人と名高いが、実は非常にふてぶてしいドSな女だ。『桔梗』と書いて『生意気』とフリガナを打ちたいぐらいだ。
「えっ! ちょっと待って。何? ヤダッ、今の遥香ちゃんよねっ! 嘘だと言って」
レースのハンカチを噛み締め、キッと僕を睨む。
「あの子は私が目を付けていた子よ! そんなあの子が……」
やれやれ、また始まった、と小さく溜息を付く。
桔梗はこう見えてレズビアンだ。
「そりゃあ、恭吾もそうやっていると、ちょっとは見てくれはいいわよ。それに、仕事に関してだけは文句無しのパーフェクト人間よ。だけど、仕事モードになると何日もお風呂に入らないし、洋服は季節毎に三着を着回しだし……」
百合子然り、矢崎家の女性は、何故、皆こうなのだろう。
ケンケン吠える桔梗を見ながら、更に溜息を付く。
――五分ほど僕の欠点を語った桔梗は、最後に「そんなダメダメ人間に、遥香ちゃんは勿体ない!」と締め括る。
やっと終わった。
そこで徐に僕は言う。
「今は夏だ」
晩夏だがな、と心で付け足す。
「まぁ! 春を過ぎてホットな夏! もう、そんなアツアツの仲なの! く~や~し~い」
こいつと話しをしているといつもこうだ。
話しがややこしい方向に向かっていく。
しかし……邪見にできない。
――それには訳がある。