悩ましきは猛進女の撃甘プロポーズ

「実は私、今は『桜の何処』の和菓子教室に通っているんです」
「何! あの和菓子の老舗に」

あそこの大福は、ノーマルのも美味いが、フルーツ大福も捨て難い。春は苺、夏は……確かブドウだったな。いかん! 想像しただけで唾液が出る。

「企業秘密ということで、餡子の作り方は教えて頂けませんが、生徒には特別価格で分けて頂けるので……もしよかったら、ブドウ大福を作ってきましょうか?」

「よろしく!」と思わず返事をしていた。

――だが、後で考えたら、何となく餌付けされ、懐柔されているような……気がした。

それにしても、『今は』と言ったが、別のところにも通っていたのだろうか?

料理教室に菓子教室、ネットで検索するとズラズラッと並び出てくる。
人間の多くは食に対し貪欲だ。
より美味なもの、より珍しいものに飛び付く。故に飽きるのも早い。

だからだろうか?

近年は有名パティシエの菓子教室、老舗料亭の料理教室も多い。
生き残りをかけ、何処も思案しての策だろう。

プロの味には程遠いが、家庭で『プロもどき』でもそういう物が食べられるのは有難いことだ。

まぁ、我が家の女たちは、『作るより食べる!』に力を注いでいるので、教室などには見向きもしないが……。

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