悩ましきは猛進女の撃甘プロポーズ
それにしても、この女、もしかしたら……只者ではない?
今までの言動で、何となく総務主任以外の何かを感じた。
もしかしたら、企業スパイ?
のほほん姿は隠れ蓑か?
――と思っていたら、その翌々日、それは判明した。
「帝のパパラッチ?」
「そう。神崎君は帝にとって重要な情報源だ。重役連たちのお気に入りだ」
KOGOに戻る白鳥が、残務処理中に教えてくれた。
彼女は社の、あらゆる情報に精通しているらしい。
いったいどんな手を使って情報を集めているのだろう? 僕にはその方が興味深い。
「矢崎課長、ゴマちゃ……イエ、遥香のこと、どうぞよろしくお願いします」
――大野木、今、『ゴマちゃん』と言い掛けたな! 君もそう思っていたのか!
やはりな、と何が『やはり』なのか分からないが、一人納得し、ん? と思う。
何故、彼女のことを『よろしく』しなくてはいけないのだろう?
釈然としない日々を送りながらも、三日と空けずスウィーツが届く。
それが、どれもこれも美味なので、無下に断れなくなっていた。
――いかん! 本当に懐柔されつつある。
どうしたものか、と思っていたら、ある日、百合子が訊く。
「恭吾兄様、遥香ちゃんにお礼をした?」
どうして? という顔をしたら、何故かいきなり舌打ちをされた。
大和撫子という異名を持つくせに、何だ、その不良のような仕草は!